アメリカを走ったことがある人ならば感じるだろうこと。それは空と大地の広さ、そしてアメリカ車がこの広いアメリカを走るために作られているという事実。空と大地についてはアメリカに限らず広い土地に行けば感じられることだが、二つ目に挙げた事実はアメリカでアメリカの乗り物、すなわちアメリカのクルマかモーターサイクルに乗らないとわからないことだ。我が国においては今だに良くも悪くも『重く大きく、ユルい乗り物』と思われがちなアメリカ車だが、彼の地の日本より荒いコンクリート舗装の道を、制限速度プラスαで長く走ってみると、その理由がよく理解できる。安定感や頼りがい、そして快適性、それらが三位一体になって乗る者を疲れさせることなく遠くの目的地まで運んでくれる。
アメリカ車がアメリカを走るために作られていると僕が思い当たる節がもうひとつある。それはボディーへの景色の映り込みへの配慮だ。日本のクルマから比べれば無闇に大きく、ともすると平板に見えるアメリカ車の車体、そこにペイントされたペイントもちょっとくすんで見えるメタリック・カラーがチョイスされていることが多い。しかしだ、広い大地や、大きな駐車場に停めたクルマにふっと目をやった時、そこに映り込む空の色、地平線の美しさに目を奪われることがしばしばある。そんな時、アメリカ車のエクステリア・デザイナーはきっと、この映り込みまでを計算してスタイリングをしているに違いない、と僕は確信するのだ。
イラストは2010年モデルのマスタング。友人が今年カリフォルニアで撮影した一枚の写真から描きおこしたものだ。この友人、僕の周りにいる男たちの中でも飛び切りのロマンチスト。きっとマスタングのボディーの映り込みまでも計算づくで撮影したに違いないのだ。
special thanks: Hajime Takeda