FJクルーザーは2006年から北米で販売されているトヨタ製のSUV。1960年から20年以上生産され世界中で親しまれたランドクルーザー、FJ40のデザインエッセンスを引用したちょっとファニーなエクステリアが目を引く。
フォルクスワーゲンのニュービートルにはじまり、ニューミニやフォード・マスタングなど、FJクルーザーの登場以前に既に名車の面影を復刻した後継車は存在した。そして僕はどちらかと言えばそんな「復刻車」に対して否定的だった。クリエーターの端くれとしての「先人の真似事なんて」という思いや、復刻車ごときにオリジナルを越えられやしない、などといったところがその根拠だ。そんな否定的でいささか意地悪な気持ちのままに、デビュー間もないFJクルーザーに乗る機会に恵まれた。舞台は11月終わりのカリフォルニアとネバダ。晩秋とは言え西海岸のイメージ通り毎日が実に気持ちのいい陽気、青空と強い日差しに鮮やかなカラーのFJクルーザーがよく映えるのだ。乗ってみれば、同時に試乗した当時最新型のどのSUVより乗りやすくて快適。室内にバランスよく配されたボディーと同色の化粧パネルはニュービートルにも見られるレトロ感あふれるインテリアデザイン手法。そのお陰もあって、ドライブしていても実に楽しい気分になるのだ。まさに目からウロコである。そして口をついて出たのは「これもアリだね!」という実に脳天気な言葉だった。
この時の反省もあって、その後すぐに食わず嫌いだった前述の3台にも乗ってみた。もちろんどれもいい、アリなのだ。旧いのももちろん魅力的だし、60年代後半のマスタングは僕にとって変わらず憧れの存在だ。だけど快適で楽しく、ストレスもなく、例えば西海岸のPCH(パシフィックコーストハイウェイ=海沿いを走るカリフォルニア1号線)をドライブするなんていうシチュエーションで、僕はたぶん復刻車を選ぶだろう。
昨年の暮れ、東京でも逆輸入されたFJクルーザーに乗ってみた。寒々しい冬の東京であっても、FJクルーザーは充分に楽しいクルマだった。いやむしろ、GO&STOPも渋滞も多くストレスフルな東京にこそ、こんな楽しくてストレスフリーなクルマがピッタリなのだと思い知ったのだった。