マッスルカーといえば1970年前後にアメリカでムーブメントとなった大排気量スポーツカーの総称。伝統のV型8気筒エンジンの排気量は7リッターを超え、ボディーものびのびとした大柄なものが大半を占めた。
近年、フォードマスタングを筆頭に、シボレーカマロ、ダッヂチャレンジャーなど、当時のスタイル、パフォーマンスを今の技術で蘇らせて日本でも熱烈なファンの間でその再来と話題となっているマッスルカーだが、その存在を意識してか、アメリカンモーターサイクルにも昨秋より『マッスル』の名を冠したモデルがリリースされている。
2002年にデビュー、ポルシェと共同開発されたと言われるハーレーダビッドソン史上初の量産水冷Vツインエンジンを搭載するV-Rod。そのシリーズに2009年から新たに加わったのがV-Rod Muscleだ。曲線を基調とした有機的なプロフィールのV-Rodシリーズの他モデルとは一線を画すエッジの効いたグラマラスな外装など、随所にマッスルカーのエッセンスが感じられる。二輪界でも稀な存在となっている空冷エンジンだが、ハーレーダビッドソンのラインナップではまだまだ主流。その中にあってレース用エンジンをベースに作られ、水冷でビュンビュン回るV-Rodシリーズは、世界のハーレー好きからはまだ受け入れられたとは言いがたい存在だ。しかし、こんな遊び心溢れるモーターサイクルを生み出せるのもまたアメリカならでは。不景気やエコロジーの波を巧みに乗り越えて、これからも楽しいプロダクツを生み出してくれることだろう。