「旧車會」と呼ばれる一部の集団の行為が社会問題になり、「旧車」という言葉自体がネガティブな響きを持つようになったと聞く。これが本当ならば、旧いクルマのことをこれからは何と呼ぶようになるのか。そもそも「旧い」よりも「古い」が無難なのかも知れない。
ヴィンテージの「ヴィ」の表記も問題になりそうだ。先日『“世界の国名から「ヴ」が消える” 変更法案が衆院で可決』というニュースが国営放送で流れ、そんなことを思った。
そもそも「古いクルマ」という定義も曖昧で、10代、20代の若い世代からすれば、例えば僕のようなおじさんがリアルタイムで乗っていた90年代のクルマたちだって充分に「昔のクルマ」なのだ。1989年型=平成元年車が30年前のクルマ、そしてもうすぐ元号も変わるのだから無理もない。
閑話休題、最近取材したアメリカ生まれのクルマのお話しをしよう。クライスラーが第二次世界大戦が始まるよりも前の1938年にラインオフしたピックアップトラックを手に入れた友人を訪ねた。彼の趣味はクルマを改造すること。現在もカスタムした日米のピックアップトラックを複数台所有して乗り回しており、このダッジもカスタムのベースとして手に入れたそう。ところが、手に入れてみるとそのコンディションが思っていた以上に良好で、改造するのはもったいないと思ってしまったという。確かに80年以上も前のクルマとは思えないビシッとした佇まいは、それだけで充分に魅力的。カスタムフリークである前に一人のクルマ好きとして、この旧き佳き時代からタイムスリップしてきたようなピックアップをこのままの姿で残すべきだと思うようになった気持ちが、僕にもよくわかる。
旧車やビンテージの解釈は曖昧だが、「クラシックカー」という言葉を使うと、なぜか格調すら漂ってくるから不思議だ。そしてこのダッジほどに旧ければ「クラシック」と呼ぶことに異論を唱える人もいないだろう。あえてちょっと今風なテイストを加えるなら「クールなクラシック」。そんな表現が、このピックアップには相応しい。