スマイル。人を笑顔にしてくれるクルマ。ニュービートルは間違いなくそんな一台だと思う。
フォルクスワーゲンビートルをオマージュ、ゴルフのプラットフォームをベースにこのクルマが誕生したのは90年代後半だった。
リアエンジンのオリジナルは、強い丸みをもちながらも引き締まったボディをまとい、カラーや仕様によっては精悍にですらあった。
いっぽう現代の安全基準を意識しながら、前輪駆動のシャシーを採用、製作されたニュービートルには、精悍さというものはなく、ただひたすらに可愛らしく見えた。正直なところ、個人的には「これがビートルの復活なのか?」と否定的な考えをもっていた。
しかし、出張で出かけた海外で見た一台によって、ぼくの意識が変わった。時まさに、『ポケモン』がアメリカ進出したタイミング。プロモーション用にピカチューカラーに仕立てら、ニューヨーク街角を走っている姿を目にして、不覚にも「これは可愛い!」と口走ってしまったものだ。あわてて周囲を見回すと、街行く人々がみな笑顔だった。
確かに、ピカチューも可愛い。しかしピカチューカーのベースがニュービートルじゃなかったら、ここまで一目をひかないだろうし、周囲を笑顔にできたかも疑問だ。
速くてカッコいいとか、ヘビーデューティーなのもいいけれど、ストリートでは(子供だましではなく)可愛いクルマ、人を笑顔にするクルマの存在もとても大切なのだ。そんなことに気づかせてくれたのが、ニュービートルだったのである。