この無骨なジープ型の四輪駆動車は、タフなクルマの代名詞として世界中で愛される「トヨタ・ランドクルーザー」の元祖。
1950年、占領下にあった日本の自動車メーカーに、米軍はある開発要請を行った。この年勃発した朝鮮戦争の影響もあり創設が決まった警察予備隊(後の自衛隊)用として、またウイリスジープに代わる軍用車をアジアで調達しようという考えにたった、「小型四輪駆動車の開発」だ。トヨタは4トントラック用の直列6気筒OHV、3386ccガソリンエンジンと1トントラックのシャシーを組み合わせた試作車、「トヨタジープ」をわずか半年で完成させた。しかし警察予備隊は本家ジープを採用。トヨタジープは国家警察(後の警察庁)の過酷な走行テスト(富士山の6合目まで登頂など)にパス、パトロールカーとして採用された。1953年に量産開始、警察の他、林野庁や電力会社などに納入され、民生タイプも生産された。
「トヨタジープ」の名称は当時米軍が使用していたジープから拝借したものであり、ウイリス社の商標であることから、その後「トヨタBJ」に変更、54年には「トヨタ・ランドクルーザー」を正式名称とすることになる。
シルエットはウイリスジープに似ており、全幅こそ1575mmと同様の数値だが、全長で434mm/全高で128mm大きい。エンジンもウイリスジープの2200cc/54馬力より大きく、3400cc/82馬力となっている。
イラストの車両はランニング・コンディションの大変貴重な一台。当時すべて手作りで仕上げられたという車体の存在感は圧倒的。直6エンジンのジェントルで乾いたサウンドも非常に魅力的だった。