ロサンゼルスの東、ルート66沿いにある小さな町、Azusa。Shinya Kimuraという一人の日本人がここでモーターサイクルのカスタムを手がけている。オーダーはアメリカ国内や日本はもとより、ヨーロッパからもあるのだという。彼の作るモーターサイクルは、彼が日本を拠点に製作を行っていた時から異彩を放ち、世界のモーターサイクルフリークから注目されていた。日本での作品はどれも有機的で生き物のようだった。渡米後は一転シャープなラインがあたかも研ぎすまされた刃物のよう。一台一台丁寧に手作りしていることもあり、芸術作品のような美しさ、圧倒的な存在感は相変わらずである。自身がボンネビルでの最高速チャレンジにも参加するほど、走ることが好きだというだけに、芸術品のように見えるモーターサイクルであっても走行性能を損なうようなカスタムはされていない。
カリフォルニアの太陽のもと、鈍く黒光りする一台も、高年式のハーレーダビッドソンをベースにしたKimuraの作品。武器か甲冑のようなシャープなシルエットをもつ外装は、スケッチや設計図をひくことなく、卓越した感性とメタルワークのテクニックのみで作り上げられている。70年代の貴重かつ珍しいクライスラー製のクーペがかすんでしまうほどの重厚な佇まいにただただ見惚れてしまった。